映画レビュー「スラムドッグ$ミリオネア」一攫千金の成り上がりストーリーかと思いきや・・・?

スラムドック$ミリオネア映画レビュー

ども!岸尾です!

突然ですが、みなさんは日本で2000年から2007年まで約7年間放送されていた「クイズ$ミリオネア」という番組を知っていますでしょうか?

みのもんたさんがMCで「ファイナルアンサー?」と圧をかけてくるあのクイズ番組です(笑)

結構有名な番組だったので僕(現在25歳)と同い年ぐらいの方は当時見ていて覚えているよーという方も少なくないと思います。

その「クイズ$ミリオネア」、元はイギリスで1998年から放送されている「Who Wants to Be a Millionaire?」という番組のパロディ番組だったってことはご存知でしょうか?

「Who Wants to Be a Millionaire?」はイギリスで1998年から放送されている国民的長寿番組で、好評だったので世界各国にむけて番組のフォーマットを販売、輸出したんですね。そしてなんと2012年までに119の国と地域でパロディ番組が作られ放送されました。日本で放送されていた「クイズ$ミリオネア」もその中の一つなんです。

おどろくべきところはそれだけではなく、番組におけるスタジオセット・音楽・照明・コンピューターの部分まで販売されたフォーマットに含まれているので基本として世界的に統一されているんですって!世界各国でほぼ同じ番組を見られるなんてすごいですよね!

さて、本題に戻りますが今回僕が見た映画「スラムドッグ$ミリオネア」は「Who Wants to Be a Millionaire?」を元に作られ実際インドで放送されていたクイズ番組を題材にした映画です。

自分は鑑賞する前までは、スラムで育った少年が頑張って勉強して番組で一攫千金を成し遂げるよくある成り上がりストーリーかなとか思ってたんですけどそんなペラペラな物語ではありませんでした(笑)

作品情報

日本では2009年に公開された本作。

原作はインド人外交官のヴィカス・スワラップの小説「ぼくと1ルピーの神様」でイギリスの映画監督ダニー・ボイルがメガホンをとり映画化されました。

第66回ゴールデングローブ賞作品賞、第81回アカデミー賞では作品賞を含む8部門を受賞。そのほかにも数々の賞を受賞し世界的にも評価されている一方、インド国内の貧富差などの問題提起をした作品としてインドでは様々な物議を醸しだした作品でもあります。

あらすじ

インドの大都市ムンバイのスラム街で生まれた青年ジャマール・マリクはインドの人気クイズ番組「クイズ$ミリオネア」に出場し残り1問というところまできていた。

しかしスラム出身の無学な彼がここまで勝ち進めるのはおかしいと司会者にあらぬ疑いをかけられてしまう。警察に連行された彼は無実を晴らしもう一度番組に戻るため警察官の前で自分の生い立ちを話していく・・・。

監督

今作の舞台はインドであり出演者もそのほとんどがインド人だが以外にもメガホンをとったのはイギリスの映画監督ダニー・ボイル

彼の有名な作品だとSFホラー映画の「28日後・・・」やアカデミー賞にノミネートされ彼自身も作品賞などでノミネートされた登山家の遭難体験を映画化した「127時間」が挙げられます。

とあるインタビューで彼は「決してこの映画は貧困をテーマにした作品ではない」「ムンバイという生命力に溢れた都市を感じてほしい」「夢は叶うという希望に響くものにしたかった」と語っています。

スラムという貧困を象徴する場所をメインに撮影する以上そのイメージは付きまとうものですが、監督が真に伝えたかったものを意識しながら鑑賞するのもこの作品の楽しみ方の一つかもしれませんね。

キャスト

今作の魅力の一つに、当時有名だった俳優は出演していないという点が挙げられます。

上の写真の彼、主演のジャマール・マリク役のデーヴ・パテルも今作で世界的に一躍有名になりました。

ケニア出身のインド系移民の両親のもと1990年にロンドン郊外のハーロウで生まれ育ちます。

イギリスの連続テレビドラマに出演しイギリス国内で注目を集めていた彼は今作の制作予定中だったダニー・ボイルの目にとまります。そして今作で様々な賞を受賞した彼は一躍有名になり、アメリカ・イギリス合作の映画「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」やインドの五つ星ホテルで実際に起きた無差別テロ事件を元にした映画「ホテルムンバイ」などで主演を務めるなど現在も活躍中の俳優となりました。

他のキャストとしては

ヒロインのラティカー役にインド出身の女優。フリーダ・ピントー

ジャマールの兄サリーム・マリク役にインド出身のマドゥル・ミッタル

ミリオネアの司会のプレーム・クマール役にインド映画ではおなじみのアニル・カプール

ジャマールの取り調べをする警部役にジュラシックワールドにも出演しているインドの俳優イルファーン・カーン

主役のデーヴ以外はインドのキャストで固められていて、スラムのシーンのエキストラなどは実際の現地の人たちを起用しているらしいです。

ではここから鑑賞後のネタバレ有りの感想となります!!

感想

大都市ムンバイのスラム街の様子をリアルに描き、ミリオネアというエンターテインメント性と恋愛要素を上手く混ぜ合わせた考えさせられる娯楽映画!

人口約1250万人の大都市ムンバイとその裏に潜むスラム街をリアルに描く

ムンバイといえばその人口は約1250万人の世界有数の大都市。観光名所も多くあり、金融都市でもあります。

ですが、今作の舞台となるのはそのムンバイ市中心部から少し下に外れた位置にあるダラビというスラム街。劣悪な環境に加え、人身売買、麻薬、売春などが横行している正に地獄のような環境です。

特に前半はこのスラムという環境におかれた子供たちの日常生活をこれでもかというほどにありありと見せつけられます。

ただ僕が感じた事なんですが、こんな環境におかれても子供たちってやっぱりキラキラ輝いているんですよね。

ジャマールの幼少期の子役を含めそこに登場する子供たちは現地のスラムに住む子供たちを雇って使っているらしく、みんな身なりはボロボロで痩せている子が多いんですが野球で遊んだりしているときは日本の子供たちと何も変わりありません。

笑顔でエネルギーに満ち溢れていて。未だに少年たちの笑顔は鮮明に思い出せるほどです。

ジャマールと兄のサリームはインドの長年の宗教問題にもなっているイスラム教とヒンドゥー教の争いに巻き込まれ親を亡くしてしまいます。

スラムでは同じように紛争や病気が理由で親を亡くしその日を生きることで精一杯の子供たちも珍しくないそうです。

そしてそんな子供たちに魔の手が忍び寄ります。それは身寄りのない子供たちを甘い言葉で誘い、集まった子供たちを自分らの金稼ぎのために利用する大人です。

女の子には男を惑わすノウハウを叩きこみ娼館で働かせ、男の子は路上で歌を歌わせて投げ銭を稼がせるというものなんですが、恐ろしいのが歌う際、盲目の方が同情を買ってお金を貰いやすいからと熱したスプーンのようなもので男の子の目を焼いて潰すんです。

信じていた大人に裏切られ、そうなってしまってはもはや逃げることもままならないのでおそらくその子供たちは一生奴隷のような生活を送ることになるでしょう。

現代社会の仮にも経済が発展しているムンバイという大都市の中でこんなことが現実に起こっているのかと震えました。

監督は「貧困をテーマにした作品ではない」とコメントしていますが、この作品を見てそれについて何かを考えないもしくは感じない人は少なくないと思うので、世界に向けてムンバイだけではなく各地に存在する俗にスラム街と呼称される場所についての問題提起を発信しているように感じました。

全ては運命だった

この映画の良いところは先ほどお話したような暗い面だけではないところです!

特に自分が上手いなぁと思ったのがミリオネアというエンターテイメント性の要素とヒロインのラティカーとの恋愛の要素を物語に上手く混ぜ合わせているところですね。

今作は「主人公のジャマールが警察に無罪を主張するため自分の生い立ちを説明している署内」「前日のミリオネアに出場しているシーン」「ジャマールの過去」の三つのパートに分かれており、この三つが交互に少しずつ進んでいき、最終的に警察の誤解を解いて最終問題が待つミリオネアに出場する。というところに収束する形になっています。

最初は少し分かりづらいなと感じたんですが慣れてくると三つの要素がパズルのピースがハマっていくような感覚でテンポよく見ることができましたし、例えるなら警察署内が「中立」ミリオネア出場時が「陽」ジャマールの辛い過去が「陰」といったイメージでバランスよくその三つが切り替わるので途中でダレるということもありませんでした。まぁ、ジャマールの過去も暗い話ばかりではないので一概に陰とは言い切れませんがあくまで僕が感じたイメージです。

そして、ラティカーという同じスラム出身のヒロインの存在がこの物語の肝になってきます。幼いころにスラムの中で出会った二人は大人になったら一緒に大きい屋敷に住もうと誓います。ですが様々なことが原因で二人は何度も出会っては別れ出会っては別れを繰り返します。

離れ離れになった後もジャマールは彼女は絶対生きているからいつか必ず会えると希望を信じて前に進むんですね。

このジャマールの一途に彼女を思うという気持ちが最終的に報われるわけなんですが、この恋愛の要素がなかったら僕はこの作品を娯楽作品として捉えてなかったんじゃないかなと思うほど物語をいい意味で軽く見やすくしてくれています。

とくに終盤のミリオネア、兄弟愛、ラティカーとの再会の三つがジェットコースターのように目まぐるしく気持ちいいテンポで展開され、感情が迷子になりました(笑)

あと、エンドクレジットでのインド映画ではおなじみのアレをリスペクトした演出は必見です(笑)

まとめ

自分はこの作品を見て「そういえばインドのことって全然知らないな」と思い、こうしてこのレビューを書く前にインドの事について色々と調べました。

作品内でも取り上げられている、開発され発展していく大都市とそこに残されてしまったスラム間の貧富の差や長年続いているヒンドゥー教とイスラム教の宗教問題など今まで耳にしたことはあっても実情までを知らなかったことを深く知ることができたことは自分がこの映画を見たメリットの一つになりましたね。

ミリオネアという世界的番組を題材に恋愛や兄弟の絆を織り込み、インドの大都市ムンバイのスラムという裏の顔に大きく切り込んだ本作。アカデミー賞も受賞したことで世界的に大きく取り上げられ、多くの人がスラムの現実を目の当たりにし何を感じたのか。

まだ鑑賞していないあなたもぜひこの機会に本作を鑑賞してみてはいかがでしょうか。

では今回はこの辺で!

また次回の作品でお会いしましょう!では!

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